ここ1年のYOON「アンブッシュ(AMBUSH)」デザイナーの活躍が目覚ましい。昨年の「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ(以下、LVMHプライズ)」のファイナリスト選出から始まり、今年3月にはアマゾンファッションが主催する特別プログラム「アット トウキョウ(AT TOKYO)」の参加ブランドとして初のランウエイショーを東京で披露。その直後に「ディオール(DIOR)」メンズのジュエリー・デザイナーに就任すると、先月にはナイキ(NIKE)との協業を発表した。現在のファッションシーンで目が離せない存在となったYOONに、ナイキとの協業から「アンブッシュ」が進む方向性についてまでを聞いた。
今回のナイキとのコラボレーションのきっかけは?
以前からナイキで働く友人はたくさん周りにいたが、実際にビジネスの話になったのは「LVMHプライズ」のファイナリストに選出されてから。去年の夏にポートランドに行って、コラボレーションが動き始めた。当初はもう少し早く販売する予定だったが、ホリデーシーズンに合わせることになり、企画から発売まで1年以上掛かった。
今回のコレクションのコンセプトは?
とにかく普通のスポーツウエアを作りたくなかった。“ナイキとのコラボだからこういうアイテム”というのではなく、自分が一人の顧客としてナイキの店舗を訪れた時、どういったものを手に取るか。そして、朝から夜までいそがしく働いてる現代の人たちはどういったものを必要としているかを考えた。その結果、“スポーツウエアに見えないが、スポーツウエアのパフォーマンスをキープしたアイテム”という考えに行き着いた。その代表作がリバーシブル仕様のジャケットとコートで、スポーツウエアのアイデンティティーを維持しながらファッションのエレメントを持っている。
「アンブッシュ」と言えばジュエリーだが、その要素をどのように取り入れた?
ゴールドとシルバーの色合いはジュエリーを意識しているもの。
ベースのスニーカーに“エア マックス 180(AIR MAX 180)”を選んだ理由は?
“エア マックス 180”は、子どもの時に初めて自分でお金を払って買ったスニーカーだから。当時のスニーカーシーンの中で際立って未来的なシルエットで、今でも広告を覚えているくらい衝撃だった。今回の話が来た時に、“エア マックス 180”はどうしてもベースにしたかった。そして、個人的に好きな“エア ズーム フライト グローブ(AIR ZOOM FLIGHT GLOVE)”(元NBA選手ゲイリー・ペイトンのシグネチャーモデル)のファスナーを開けると別のスニーカーが現れる仕様を加えた。履いた時にとにかく楽で、足がラッピングされるような感覚になるようなデザインにしている。“エア マックス 180”をここまでアレンジしたのはナイキ史上初めてだと思う。このスニーカーをはじめ、今回のコレクションは「アンブッシュ」らしい革新的なアイデアが詰まっている。
「アンブッシュ」らしさとは?
自分の中では漠然と“モダンであること”だが、一つのブランドではなく”アイデアコレクティブ”と考えほしい。もちろんメーンはジュエリーとウエアで、今年はこの2つを中心にいろいろとやってきたが、来年は全く関係のないオファーが来るかもしれない。ブランドの考え方に合えば何だってチャレンジしたい。
昨今のシーンでコラボは重要で、話を聞く限りかなり積極的に思えるが。
自分たちからオファーすることはないし、オファーが来てもブランドの考え方とアイデアに合わず、ストーリーがないと思ったら断る。これをルールにしている。アマゾンとの協業を決めたのは、私がシアトル出身で、アマゾンもシアトルに本社を構えていることと、コレクションがシアトルに着想していたから。今回のコラボも、初めて買ったスニーカーがナイキだったというストーリーがあった。
ジュエリーからスタートした「アンブッシュ」でウエアをスタートさせた理由は?
ジュエリーのルックを撮るときに、「アンブッシュ」のウエアがないために他のブランドのウエアを使うしか方法がなく、それに違和感を感じたことがきっかけ。ウエアを作り始めてからは、全体的な世界観も作ることができるようになり、よりデザインが楽しくなった。
「LVMHプライズ」のファイナリストに選出されてから環境は変わった?
変わったことも、変わらないこともある。ただ、ブランドとしてウエアをスタートして2シーズン目にノミネートされたことが本当にうれしかった。声が掛かったからとりあえずトライしたが、ファイナリストに選ばれるとは自分たちでも思っていなかった(笑)。
10年先、20年先の未来は?
考えがコロコロ変わっているので読めないが、今やっていることをレベルアップしていきたい。もっと新しいことを始め、勉強し続けたいと思っている。文化だったり、世界で何が起こっているかだったり、デザインは何でも知ることでいいアイデアが生まれる。常に勉強していかないとデザインは尽きてしまうから。