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始まりの詩 - 後編 - 再会と門出

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 一気に視界が開けた。日差しよりも眩しい光に目が慣れると、少し先に人の姿が見える。扉が開かれたのに気付いたのか、その後姿がゆっくりと振り返った。


「……カミシュ、様………」
「リー」
 もうずいぶんとその姿を眼にしなかった、けれどずっと会いたいと願い、その思いを頑なに封じてきた人物がそこにいた。昔と変わらず人懐こい笑顔を向ける彼は、口に手を当てたまま立ちすくむリニカを、両手を広げて抱きしめた。
 言いたい事も聞きたい事も山のようにあるはずだった。それなのにそのどれも喉で詰まって出てこない。あげく視界は歪むばかりである。そんなリニカに「久しぶりだね」と穏やかに囁くものだから、リニカの涙は止まらなくなってしまった。



 リニカが落ち着くと、カミシュはこれまでの経緯を簡単に話して聞かせた。リニカとずっと共にいるには彼女の寿命を延ばさねばいけない。けれど龍にはそんな力はない。そこで自分の寿命を保管し、監視するという名目で事実上リニカに自分の寿命の半分を分け与えることができた。結果的に寿命が半分になったが、そんなに長い時間一人でいてもつまらないだけだ。それが彼の種明かしだった。
 少年は「罰」と言ったが、それは彼なりの配慮だろう。

 こんなに恵まれていて良いのかと思う。大したことなどした記憶はないのに、礼と言って渡されたものがあまりに大きい。改めてあの少年にお礼を言いたいが、再び会える気がしないのは何故だろう。





 さて、と声を出しカミシュが立ち上がる。見上げるリニカに笑顔を向け、手を差し伸べた。
「さぁリー、まずどこに行きたい?これからたっぷりと時間はあるし焦る必要はないよ。……ちなみに僕としてはまずりーの作ったくっきーかたるとが食べたいんだけど、ダメかな?」
 



これにて始まりの詩、完結です。 私にしては珍しくしっかりとハピエンなお話でした。 あとこれ、ネタとしてはシュリマが初代王と出会う話とかリーとシュリマのけんかがあったりするのですが、リーとカミュにスポットを当てるためにあえて割愛してあります。 その気があれば番外とかで・・・とも思いましたがもう書き上げたのもずいぶん前なんでたぶん書かないです。
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