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Land Traveler - 第1章 - 14話

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 ファルトは倒されたいくつもの木材を避けるように村であったであろう焼け跡を奥へと進んでいた。木材と言っても殆どが黒く墨と化していた。

 ファルト達はキールに教わった、先日壊滅した村の跡地を訪れていた。それは生き物の気配を感じさせない、荒れ果てた光景だった。数日に渡って村を焼いたであろう炎は、大地にも牙を剥いたらしく、10日ほど経過した今でもむわっとした空気を立ち上らせている。その地面が所々に黒く色を変えているのは、焼けた木材故か、それとも他のなにかか。その答えは辺りにうっすらと立ち込める臭いからある程度推測できてしまった。

「これは、いったい……?」
 その臭いに顔を歪めつつ、鼻を手の甲で押さえながらエリスが思わずといった様子で呟いた。呆然と言った様子の彼女はただただ立ち尽くし、村のなれ果てを見回すことしかできなかった。
「数日前まで村だった場所だ」
 発せられた声に振り向くと、足で道を作りながら進んでいたファルトがその足を止め、エリスのほうに顔を向けている。気がつくと彼との距離は思った以上に開いていた。彼の視線に含まれた遅れるなと言う意図を感じ取ったエリスは、小走りで彼の作った細い道を辿る。エリスがすぐ傍まで来るのを待って、ファルトは再び歩き出した。

「戦争、ですか…?」
 ファルトの後を着いていきながら訊ねる。先を進むファルトは、時折しゃがんでは何かを確かめるように僅かに残された壁や柱などをじっと見つめていた。
 いくらこの国の民ではないエリスでも、飛竜から見えた遠くの物々しい様子から、ここが国境と程近いことはわかった。だが、物々しいと言っても関所と塀が見えただけで人が増員されたような気配は見当たらなく、至って日常と変わらないように見えた。
「いや、隣国との関係はおおむねどこも良好だ。…そもそも今うちに戦争を仕掛けても何のメリットもないだろうしな」
 やはりしゃがんで壁を調べていたファルトがエリスの言葉を否定した。隣国との情勢をさらりと答えられるところは、さすが皇子と言ったところか。立ち上がった彼は、今までよりも少し大股で歩き出す。それをエリスは小走りで追いかける。通り過ぎ様に先ほどまでファルトが見つめていた壁を見ると、何か文字のようなものが描かれていたが、それが何なのか、一瞬しか見えなかったエリスにはわからなかった。
 少しすると再びファルトが立ち止まった。田畑だった場所なのか、先程よりも瓦礫が少なく、何処か閑散としている。火の手はあまり上がらなかったらしいが踏み荒らされた形跡がそこかしこに見受けられる。
「いったい誰が…」
 続く言葉は音になることなく消えていった。結果として彼女をここへ連れてくることとなったファルトは、想像の範囲内なのか驚く素振りなど一つも見せることなく、再び地面に手をついて何かをじっと見つめている。
「魔法陣…?」
 しゃがんだファルトの横から覗き込んで見えた絵柄に首を傾げる。魔法には詳しくないエリスだったが、そこに描かれた二重円と消えかけてはいるが細かく書かれた文字が魔法陣を示していることは辛うじて理解できた。ファルトは振り向くことなく短く肯定の意を示す。その手が魔法陣の文字の上を滑り、その意味を探る。時折文字の消えた部分の上で指を動かし、そこにあった文字を探っているようだった。


 その魔法陣が青黒い靄のようなものを発するのとエリスが肌が総毛立つのを感じたのはほぼ同時だった。捕らえられていたケミルコレクターよりも、森に潜むモンスターよりも、もっと異質で何かがまとわりつく様な気配。それが魔法陣からだけでなく何もないはずの周りからも感じられる。隣でファルトのが舌打ちをする音が聞こえた。
「まだ活きていたか…」
 忌々しげに呟くと短い言葉と共に魔法陣の端を崩す。現れていた靄は掻き消えていったが周りの気配は消えなかった。
「喜べ、『これ』の原因かその仲間に会えるぞ」
 立ち上がったファルトは腰にかけている剣に手をかけた。小奇麗な音が辺りに響く。

「死にたくなかったらお前でもアクエリアでも良いから応戦するんだな」
 戸惑うエリスにファルトがそう声をかけると、二人の前方に見える地面が隆起し、何かが二人めがけて襲ってきた。



戦闘シーン入りまーす 国境部隊には対地上だけでなく対空中用の部隊もいます。 要となる国境地帯にはそれこそ飛竜とかもいて、関所を通らずに空中から超えようとすると飛竜に乗った兵士が追いかけてきます。 そうでない所だと鷹とか鷲とかが大群で襲い掛かってきます。 あと国によっては魔法使いを配置して魔法で越えられないようにしていたりもします。 …正直一番怖いのは鷹や鷲の集団攻撃だと思う。。。
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