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蹲っていたその人物は、遠くのほうに見えた明るい色に目を凝らした。まるで自分を導くかのようなその光に自然と手が伸びる。先ほどまで指一本さえ動かせなかったのが嘘のように軽い。伸ばした手を一度戻し、手のひらをを見つめその手指を曲げる。今まであった、無数の糸に絡められれいるような感覚はなく、己の思うままに動く。
恐る恐る脚を曲げ立ち上がる。何も抗うものはなかった。自然と口角が上がる。
(行ける、これなら。あの、懐かしいような声の許に…)
導かれるままに光へと向かって足を進める。
光の果てで見留めた蒼白い色に微笑んで見せると、彼は安堵して瞳を閉じた。
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