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Land Traveler - 第4章 - 11話

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「ったく!こいつら何なんだよ!!?」
 突如頭上から大量の矢が降ってきたと思ったら、見たこともないような化け物が城壁を伝って襲いかかってきた。止むことのない攻撃にレオマイルは化け物の首を切り落としながら愚痴をこぼした。何体か倒したことで皮膚は硬いが首回りが弱いことがわかったが如何せん量が多すぎる。飛竜までも応戦しているが、埒が明かない。
「わかりません!ただ、人為的に造られたものだと」
 後ろから襲いかかってきた化け物をギリギリに完成させた魔法陣で退治しながらレイラがレオマイルの言葉に答える。攻撃を受けた化け物は呻き声を上げてのたうち回る。その上を容赦無く他の化け物が踏みつけて近づいてくる。仲間意識などあったはずもない。レイラの近くまできた化け物をレオマイルが仕留める。
「ありがと」
「この位はしないとね」
 片目を瞑っておどけて見せるレオマイルにレイラが笑みをこぼす。視線を交わし合うと、二人は再び化け物へと向かって行った。



 ファルトとエリスは、レオマイルたちとは少しばかり離れたところで戦っていた。こちらも同じような状況では襲いかかる化け物は減ることを知らないように見える。ふとファルトは視界の隅に映るエリスの動きが常より遅いことに気付いた。注視して見ると左肩が赤く染まっている。降ってきた矢が刺さったのだろう。ファルトは化け物を倒しつつエリスに近づいていった。
「見せてみろ」
 突如そう声をかけられてエリスは少し驚いた様子で振り向いた。ファルトの視線が左肩に向けられていることに気付いてそっと、当てていた手を離した。すでに刺さったはずの矢は抜かれており簡単に止血されていた。
「毒はなかったようだな」
「はい」
 血がほとんど止まっている様子からそう判断するとその傷口に右手を添える。すぐに青白い光を帯びたのを見てエリスが慌てた。
「いけません!こんなことに魔法を使っては!!」
 そう言って止めようとするよりも早くファルトは傷を癒してしまう。痛みも傷口も消え、心置きなく動かせるようになった肩を使ってファルトの背後から近づいてきた化け物を一撃で仕留める。
「申し訳ありません、お手を煩わせてしまって…」
「気にするな」
 気まずそうに謝ると当たり前のことのように短く答えられた。ファルトの意識は既に別のものに向けられているらしく、視線は遠くを捉えている。
「蒼!城壁にいる弓兵を退治しろ!!!」
「!ケイもお願い!!」
 ファルトのその叫びに呼応するように二匹の飛竜はそれぞれ一鳴きすると、グン、と城壁に向かって飛び上がる。二匹が城壁を攻撃したことであっという間に四人に降りかかる矢がなくなった。襲いかかってきていた化け物も順調に数を減らし、その数は両手で少し余る程度となった。
 視界がずいぶんと開けたことにホッとする四人に、城壁とは別方向から何かの飛ぶ音が聞こえてきた。始め、城へ撤退する敵の音かとも思ったが、段々と近付くその音に再び気を引き締める。大きくなる翼音と共に向けられている敵意までひしひしと伝わってきた。ファルトは、すぐに応戦できるようにそちらに神経を集中させる。
(…来るっ!!)
 ファルトが後ろを振り返り、魔法を放った瞬間、一匹のドラゴンから炎が飛んでくる。音を立てて炎とファルトの放った魔法がぶつかって相殺される。
 そのままドラゴンは四人から少し離れた上空で留まる。その背からミレディアが飛び降りて、四人に対峙した。
「はぁい、お元気ぃ?」
 軽く片手を上げ、さも楽しそうに四人に話しかける。言葉の割に挑発的な瞳に、ファルトたちに緊張が走る。
「この前のお土産、喜んでもらえたぁ?」
 嘲るような笑みを浮かべたミレディアに、ファルトがの奥歯がギリ、と音を鳴らせた。

「まさか、ここに来て女の人からあんなに盛大な歓迎を受けるとは思わなかったよ」
 ファルトを制してレオマイルが話しかけた。極力自分を抑えていたが、顔が僅かに引き攣る。それほどまでにミレディアの強さが伝わってくる。今までの化け物など比べ物になどならない、伝わってくるそれで肌がピリピリと痛むほどだった。
「じゃあぁ、今度は誰か私とぉ、相手、してねぇ?」
 言うが早いか、その右手に剣が現れる。そのまま駆け出した彼女はうっすらと笑みを浮かべていた。静止の声など届きそうもない。
 ガキィっと激しい音がして剣が混じり合い火花が散った。すぐにミレディアが後ろへ飛び退く。対峙した相手を確認し、薄く笑った。
「あら、私の相手は貴方なのぉ?」
 小馬鹿にしたようなニュアンスを存分に含ませて歪な笑みを向ける。向き合ったレオマイルはその挑発に乗ることもなくただ肩を竦ませた。
「役不足かい?」
 その問いにミレディアの瞳が鋭く光る。
(こいつ、弱くない…)
 彼女にとってそれが酷く嬉しかった。倒しがいがあるとでも思ったのか。
「十分よっ!!」
 言葉と同時に再びレオマイルに向かって襲いかかる。レオマイルも県を構え直し、駆け出した。




「レオマイル様一人にお任せしてしまってよろしかったのでしょうか?」
 ミレディアとレオマイルが対峙している間、他の三人はミレディアが引き連れてきた敵と戦っていた。その間もエリスはしきりにレオマイルを気にして二人の方に視線を向けていた。
「大丈夫だ、あいつはたいていふざけているが、剣術の腕は確かだ。少なくともヤツと互角で渡り合うくらいはできるだろう」
 近づいてきた化け物を剣で一突きする。エリスももちろん話し込んでしまうわけにはいかず、化け物を倒しながらも会話を続ける。
「ですが、あのミレディアという人物、相当強いですよ?」
 一見その口調と態度で隠されていてわかりにくいが今レオマイルと戦っている様子を窺うだけでも相当な力を持っていることがわかる。四天王の一角を担うだけの実力は十分にあるようだった。エリスにそう問われてもファルトは相変わらず平然とした表情を変えない。
「俺たちの今すべきことは、あいつらの邪魔をしないことだ」
 そう言うと化け物たちに向かって召喚した氷柱を大量に放つ。それに直接当たった化け物たちが呻き、よろめきながら倒れて行った。
 エリスも彼の言葉に納得したのか口を閉ざし、化け物との戦いに集中した。



ミレディアの口調は自分でも時々くどいかな、と思います、直さないけど。 彼女は敵側の中でも結構お気に入りのキャラなんですが、バックボーンがうまく思いつかなくて個人的に悔しい思いをしています。 ちなみによくライと一緒なのは他の二人に比べて我侭が通じるから、消去法です。
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