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Land Traveler - 序章

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形を成すことすら許されない、廃れた地。殺された、街。 
足下に視点を移すと僅かに形を留めている、乾涸びた死体。 
己の膝を受け止めた砂が音を吸収する。 
手に乗せた筈の小さな死体は、両の手のひらの上で形を留めることなく風に浚われてゆく。 
無意識に握り締めた中に形は残らず、ただ、砂だけが残っていた。 
理不尽に思える所業。 
誰に、何にこんな権利があるのだろう。 
何の謂れもない人を、物を、生命を奪っていいものなど、いない筈だ。 
睨みつけるように見つめる先には、ただただ砂が続くばかり。 
視界の端にすら、形を留めたものが見当たらない。 
手に力がこもる。 
知らずの内に強く握り締め、胸元に抱き込むようにしていた。 
後の気配は、変わることなく控えている。 
「次の地は?」 
振り返ることなく訊ねる。
そうすれば、静かに変わる気配。 
少し振り返り見やるとただ黙って北の方角を指し示していた。 
その先が、向かうべき地。 
立ち上がり、握り締めていた手を下ろすと、僅かに残っていた砂さえも落ちて判別が付かなくなった。 
それに構いなどしない。 
「行くぞ」 
指し示された方向に向かって歩き出す。意見を聞かずとも、そして待たなくとも無言で付き従う気配。 
口元に指を宛て、甲高い音を鳴らす。暫くもないうちに何処からともなく飛竜が舞い戻ってくる。 
それが目の前に降りると同時に舞い上がる砂塵に構わず、飛竜に跨り手綱を取る。 
慣れた動作ですぐさま空に飛び上がった。 


飛竜はその翼を広げ、その背に主を乗せて飛び上がる。 
嵐に近い風が起こり、その辺り一帯の砂を巻き上げた。 
飛竜はただまっすぐに、北に向かって消えていった。
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