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Land Traveler - 第1章 - 15話

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 隆起した土の中から現れたのは、人とはかけ離れた容貌をしたものだった。手足は2本ずつあるがその長さがひどく短く、その割に腹が大きく張っているため、頭が小さく見えた。まるで、子供の遊び道具であるボールに木の枝を4本刺しただけのようなものが大小さまざまに数十体。大人の膝まで届くか、と言ったサイズから身の丈3倍はありそうなものまでいた。
初めてそれらを目にしたであろうエリスが驚きに眼を見開かせる。息を呑む音が、ファルトの耳にまで届く。隣で固まったままのエリスを尻目にファルトがわざと剣の腹と鞘を擦りながら剣を抜いた。
「ボーっとするな、来るぞ!」
 鉄同士が擦れ合う不快な音と怒鳴られたその言葉にエリスの意識が戻ってきた時には、怪物の中でも比較的小柄なものがすぐ傍まで迫ってきていた。慌てて振り上げた剣は鞘から抜けなかったが、すぐ後ろに続いていた数体を伴って意外にも簡単に吹っ飛んだ。下敷きとなった後ろにいた怪物がなんとも形容しがたい不気味な声音で呻く。しかし安心する間もなく次々に怪物が襲ってくる。しかも距離に比例するようにその大きさが増しており、手には斧や棍棒のようなものまで持っていて、先ほどの怪物など大きさはもとよりパワーも比べ物にならないように思えた。
 数歩後退りして間合いを取る。先ほどのものは小さい分随分とすばしこかったのか、次が来るまでには少し時間があった。その間に剣を抜いた鞘は邪魔に感じたが、万が一アクエリアに変わったときのことを考えると捨てるわけには行かなかった。防御か先ほどのように使えばいいかと改めて鞘を握り直す。辿り着いた怪物たちはにじり寄るようなことはせず、一気にエリスに襲い掛かってきた。

 一方ファルトも、そんなエリスの様子をただ観戦してるわけにも行かず同じように怪物を相手に戦っていた。先ほど鞘から抜いた剣を無駄のない動きで怪物の腹や頭など、急所であろう部分に突き刺してゆく。彼の動きに合わせて、纏っている外套の裾が舞うようにはためく。剣を抜かれた怪物は青紫色をした液体と吐き気を催しそうなほどの悪臭を放って地面に倒れ臥した。一気にあたりに充満したその臭いに顔を顰めるも、すぐに迫り来る怪物の群れに口許を覆うこともできず戦うことを余儀なくされる。しかもその大きさは段々と大きくなり、急所、特に頭部を一発で狙うのが難しくなってきていた。
「…チッ」
 ファルトの視線の高さに怪物のへそと思われる部分が入り込んだ時、流石に剣だけでの応戦は無理だと感じたのか一度舌打ちをした後、数歩飛び退き間合いを取ると外套を後ろへ投げ捨てた。片手で剣を構えたまま左手の人差し指と中指を立て、その肘を上げて左の手の甲で口許を覆い隠すような格好を取る。その状態で目線を前方の怪物に向けたまま静かに呪文。詠唱を始めた。獲物が遠のいたことに気付いた怪物が間合いを詰めようと向かってくるが、大きさゆえか、その動きは鈍い。その様子をしっかりと把握しながらも言葉を紡ぐ事はやめない。すぐにファルトの左手の、立てた2本の指の先から蒼白い光が浮き上がった。よく見るとその中にはごく小さな魔法陣のようなものが描かれている。敵に向かって放つには小さいとも見えるそれを、ファルトは己の剣に持っていく。剣に導かれた光は、彼の左手を離れ、螺旋を描きながら剣の先まで渡っていった。すると光を受けた剣全体がうっすらと蒼白い光を纏う。光が剣を覆うのを見届けると、ファルトは再び剣を構え、敵を見据える。やはり小さいものより愚鈍な怪物はその手に持った棍棒を振り下ろすにはまだ遠い位置にいた。けれどファルトは構わずに剣を振るう。当然剣は空を切ったが、剣を覆った蒼白い光が剣圧に押されるかのように敵に向かって飛んでいく。光は怪物に近づくと四方に広がり、周りにいた怪物も巻き込んで一瞬の内に消え去った。視界が開け、今まで後方に構えていた怪物たちがたじろぐ様子をしっかりと捉えることができた。
 怪物たちの様子がわかったと言ってもそれなりに距離があった。すぐに再びこちらに向かってきたとしてもあの怪物たちの速度ではまだ少し時間を要するだろう。生憎ファルトの剣の光も薄くなっており、元のように戻るにはまだ掛かりそうだ。そのわずかに空いた間にエリスの様子を伺う。
 いつの間にか入れ替わったらしく、瞳を閉じたまま魔法を繰り出しては怪物にぶつけていた。左手には鞘に納めたままの剣が握られている。始めに見られた戸惑いなどは一切見受けられず、ただ必死に目の前の敵と戦っていた。
(使えないわけではなさそうだな…)
 うろたえることなく果敢に向かっていく姿にそう感心すると、再び光が戻った剣を構え、目の前の敵に集中した。



と言うわけで戦闘終了~。 リメイクしてて思うけど、ファルトの魔法ってほんと、チート技に近いの多いよね。 でも変えない ← あ、もしかしたら後日様子見て追加するかもしれない。 抜いたけどちょっと迷ってるので。
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