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Land Traveler - 第4章 - 6話

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「彼奴らはただ今、ヴィルドニストートを進んでおります。このままですと遅くとも明日の日中にはこの城にたどり着くと思われます」
 偵察に向かわせていた部下の報告を一通り聞くと、その者を下がらせヴォルドヴェラは椅子に腰をかけた。目の前で首を下げている部下を眺める。すぐ目の前には四天王と呼ばれているライやミレディア、ディオクレイアもいる。その後ろに控えるは長いローブを身に纏った集団や側に獣を従えた者たち、武器を持った者もいたが、どう見てもそれらは人間ではなかった。部屋の外に意識を向けると、獣に似た唸り声やうめき声が聞こえた。
「ライ、ミレディア。どうであった?」
 視線を手前に戻し、下を向いたままの二人に声を掛ける。聞かれたらいが「は」と短く答え、口を開く。
「四名とも相当な力を持っているようです。特にファルトにつきましては、召喚したモンスターを一瞬で消し去るほどの魔法力を持っています」
 着いて早々にミレディアが仕掛けた〈お土産〉を片付けた消滅魔法を思い出しながら答えた。
「それと、以前確認できなかったケミル族のもう一つの人格ですが、こちらは魔法を得手としているようです。真言タイプの割りに強力な魔法を扱えるようで、少々厄介な相手かと」
「ミレディアはどうだ?」
「は。ウィルディスのレオマイルですが、彼奴の場合は手練れの剣士のようです。動きも俊敏でカンも優れております…が、魔法はあまり得意ではない様子。また、こちらに来る直前に精霊を一人仲間にいれたようです。この者もファルト同様強力な魔法陣を創りだすことができるようです」
 ライが言わなかった二人の事を報告した。特に新たに増えたレイラのことは言っておかなければならない。
 ヴォルドヴェラは二人の言葉を目を閉じたまま聞いていた。ミレディアの言葉が途切れたあともしばらくは背もたれに体重を預けたまま口を開かない。部屋に沈黙が訪れ、そこにいる誰もがヴォルドヴェラの次の言葉を待った。
 閉じられていた瞳がゆっくりと開かれた。ヴォルドヴェラの一挙手一投足を誰もが固唾を飲んで見守る。そんな部下の様子を見回すと、四天王に顔を向けた。
「大型以外のモンスターはある程度を残して外へ出せ。ドラゴンは城の上空、ウィザードは城壁付近に待機。ディオクレイア、弓兵と『奴ら』を城郭と城壁の上に配置しろ。それと…セルディス、ノーヴ《黒魔》をそこら中にばら撒いておけ」
 突然、ディオクレイアの隣の空気が揺れ、清閑そうな男が現れた。無造作に伸ばされた漆黒の髪が揺れて顔を上げると、紫電の瞳がヴォルドヴェラを捉えた。底のない泉のような不気味な静けさを漂わせて口を開いた。
「そこらじゅう、ですか?」
 片膝をついてはいるものの、ヴォルドヴェラの瞳から目を逸らさないその態度は、どこか他の三人と異なる。けれどそれを誰も咎めない。
「ああ、城郭の内側全体に、だ」
「承知」
 短い言葉の後、現れた時と同じように消えていった。それを皮切りに他の三人も周りに指示を出す。一気にざわめきだったが、部屋から部下にいる部下が減るごとにそれも収まる。最後にライが一礼をして扉が閉じられたことで再び静寂が戻った。




「ドラン、わかっているな」
 静まり返った部屋にヴォルドヴェラの決して大きくはない声が響く。その隣でかしこまったまま首を下げるドランが控える。
「勿論でございます。彼奴らのいる場所は元よりゾンビ共の生息地。今でこそ奴らの魔法が効いておりますが、それもそう長くは続きますまい。魔法の効力が切れた時のあやつらを見れないことが残念でなりませぬ。あぁそれと、残りのゾンビ共も既に準備を終えております」
 いつでもご命令を、と再び頭を下げたドランに薄く笑みを浮かべる。そのまま椅子から立ち上がると、マントを翻して部屋から立ち去った。

 ドランは扉が音を立てて閉じられるまで、頭を下げたまま彼を見送っていた。



魔法タイプは魔法陣と真言(スペル)の2種類です。 地面なり空中になり魔法陣を描いてそこから発動させるのが魔法陣タイプ。 真言タイプは短い呪文をキーにして魔法具(杖など)から発動させます。 時間がかかるけど強力な魔法が扱えるのが魔法陣。 短時間で発動するけどあんまり強い魔法はないのが真言。 世界設定的にはそのうち複合型タイプが誕生するんでしょうね。 あ、ノーヴは黒魔法使い的なものです。 魔法使い(ウィザード)が人を殺したり呪う魔法ばかりを使っているとそのうちノーヴになります。 そうなると治癒魔法とかは一切使えなくなります。(使うと自分に毒として帰ってきます)
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