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翌日の昼前には四人は街を離れ、大陸の海岸線である崖の上に着いていた。それぞれ必要なものはすべて揃えてある。ファルトも、昨夜レイラと話してリストアップした物をきちんとその鞄の中にしまってあった。
四人顔を見合わせると、改めて視線を海のむこうに向ける。海は荒々しく飛沫を上げ、空は暗く、その先にあるはずの島は黒い靄に隠されてその姿を四人に見せない。所々で稲光が走るのが見えた。
「いよいよ、か……」
「はい。ここからは、私があちらの島までご案内致します」
少しの重々しくレオマイルが口にした言葉にレイラが答える。いくら見つめても海や空の様子は変わらない。それが自分たちを威嚇しているように見えた。その禍々しくも見える景色にエリスは恐怖を覚える。
「大丈夫だ」
知らず震えたエリスの肩をファルトが軽く叩く。エリスは横に立つファルトの顔を覗き見た。その、迷いのない表情を見て抱いた不安や恐怖がスッと抜ける。しっかりとファルトを見つめ、大きく頷く。その途端、示し合わせたように蒼が太くしっかりとした鳴き声を上げる。それはまるで、任せろとでも言っているように聞こえた。手綱を引くと、レイラを先頭に、ついに帝国へ飛び立って行った。
崖から見た海や空は予想を違わず激しく、まるで四人の侵入を拒んでいるようであった。頭上の雲では雷鳴が轟き、激しく雨が吹き付けることもあった。黒く靄に覆われた中に入る前にレイラによって防護壁を創られたが、それでも完全には防ぎきれずに風に煽られるたりもした。
「大丈夫ですか!?」
魔法陣を作り、先頭を行くレイラが後ろを振り返って訊ねる。
「ハイ…ッ」
「っああ…」
「なんとかなぁ!」
三者三様の答えを確認すると、レイラは再び顔を前に向ける。目を凝らした先に、ほんの少しだけ周りと違う色を見つけた。
「もう少しです!皆さん、耐えて下さい」
その言葉にレイラに視線を向けると、その額にはびっしりと汗が流れていた。先陣を切り、作った魔方陣を保つことは、それほどまでに体力を必要とすることだったのだ。辛そうなレイラの様子を見て三人は再び歯を食いしばる。こんなところで倒れるわけにはいかない、何としてでもここを抜けなければ。レイラが指す、雲が開けた先を目指す。その先に待ち構えているのがデコルヴィザード帝国。ファルトの兄、ヴォルドヴェラの本拠地だった。
4章入りました。
この章かあと1章で終わります。
終わり方をまだちょっと悩んでるのでどっちになるかかわからないという‥‥(苦笑)
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