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Land Traveler - 第3章 - 3話

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「どうだ、わかったか」
 膝をついた瞬間に降ってきた声にゴクリ、と唾を飲み込んだ。俯いた視界の端に閃光が見え、少しした後に小さく雷鳴が届く。任を与えられたのは自分ともう一人。しかしその一人はなぜかこの場にいない。

『視た』のは自分だが人物を特定したのは共に向かったもう一人だ。


「これだ」
 既にただのゴミと化した化け物たちの残骸から数刻前の様子を漁っていた時だ。何体目か数えるのすら煩わしくなった頃にようやく目的の「モノ」が映った。それまでのものはてんで使い物にならなかった。敵の一部分しか捉えていないものが殆ど。中には人影すら捉えていないものまで。そんな中ようやく見つけた、姿と足取り。溜め息と共に出た言葉には随分と疲れの色が混じっていた。しかしまだこれで終わったわけではない。

「ディオクレイア」
 離れた位置にいた同伴者を呼ぶ。無表情にどこかを見つめていたが、一度軽く視線だけよこすとそのまま近づいてきた。早く見せろと言わんばかりの同伴者の態度。それに害した気分をおくびにも出さず手にしていたものに向かって呪文を唱える。すぐに手の内のものが最期に見ていた「モノ」を映し出した。
 視界の上空に白地に翼先に向かって赤く光る鱗を持つ飛竜が見えた。その上に白銀の光に似た色の頭が覗く。一度見た人物であろうか。
 それより手前で別の人物が天馬からすべるように降りた。軽く結んだ茶色をどこか愉快そうに揺らしながらモンスターをなぎ払っている。その人物が段々と近づく。それよりも手前に映る大きな腕。男が振り向いた、と同時に銀色の光が走る。それでブツリ。
 それで終わりだった。後はただポッカリと穴が開いたように真っ暗な空間が浮かんでいる。その空間に視線を向けたまま、「ふむ」と同伴者が呟く。色合いは落ちており、若干ノイズが混じったような映像だが十分だったようだ。
「これだけか?」
 非難する、と言うよりはただ確認のために聞いたと言ったところだろうか。ちょっと待て、と否定して傍に置いていた別の「モノ」を手にした―――。





「相手は3人組のようです。一人はケミル族でしたが片方の能力しかわかりませんでした。残りの2人は・・・・」
「共にルノア族です」
 記憶を辿りながらの言葉を遮るように突然背後から声が響いた。次いでカツカツと近づく音がする。バサリ、とした音と同時に右隣に傅く影。バッサリと肩口で切られた微妙に紅い髪に覆われてその横顔は見えなかった。
 今までどこ行ってやがった、と内心毒吐くも口には出さない。そもそも彼の方の御前で言い争いなど起こそうものならどんな制裁が下るかわからない。
 ざわつく周りを無視して更に言葉を続ける。
「一人はウィルディスの第6王子、レオマイル。もう一人は・・・・」
 ここでディオクレイアの言葉が一度止まった。不思議に思い、再び横を窺う。
 髪の毛で覆われていた横顔は、今はしっかりと主を見上げていた、いっそ不自然とも言えるほどに。彼の方をこの場であからさまに見上げるなど無礼にもほどがある。

「ファルト=L=ヘラザード。陛下の、弟君に御座います」
 その言葉に周りが一層どよめいた。陛下の弟、とはどういうことだ。確かに陛下は赤子の頃ヘラザードの山奥にいたのをディオクレイアが見つけてきた。勿論、そういったことがあってもおかしくはない。だがたとえそれが事実であったとしてわざわざこの場で口にした意図がわからなかった。
 じっと見つめるディオクレイアの顔には僅かに笑みが浮かんでいる。首筋に冷たい物が伝い落ちた。挑発、している。あの、陛下を。

「弟、か」
「はい」
 対する陛下の声色は普段のものとは違い、どこか楽しそうだった。無遠慮に見上げたディオクレイアを咎める様子もない。

「もう一人はヘラザード王国の第一皇子ファルト=L=ヘラザード。3ヶ月ほど前から姿を眩ましていたようです」
 ディオクレイアは一度告げた名前をもう一度口に乗せた。聞き間違いではないとでも言うかのように。ライは周りの視線が一斉に自分に集まったのを感じた。どう言う事か説明しろ、と声なき声が聞こえる。陛下との関係など俺が知るか、と内心毒吐く。その間もディオクレイアは陛下と話を進めていた。


「してライ、どうであった?」
 突然話を振られ、一瞬何のことを聞かれているのかわからなかった。会話が陛下とディオクレイアの2人で進んでいたせいでもある。すぐに頭を巡らせ、調べていた3人の実力についてだと思い当たる。
「‥‥は、相当の使い手らしく、雑魚どもではまったく相手になりません」
「…だろうな……」
 満足したのか、陛下はそれ以上追求してくることはなかった。そのままディオクレイアにも同じ事を訊く。その後僅かに考えるような仕草を見せたヴォルドヴェラが再び口を開いた。
「ライ‥‥それとミレディア、この件を暫くお前達に預ける。ドラン、いるか?」
「ここに」
 傅くライと共に新たに別の名前が呼ばれる。返事の割にゆっくりとした動作で老人が現れた。彼より先に呼ばれた女は元よりいたであろう柱のそばで既に畏まっていた。
「例の件、どうなっている」
 他の三人を無視して訊く。老人は余裕の笑みを浮かべて答える。
「滞りなく。ご覧になられますか?」
 背が低いため、見上げて訊ねる。「ああ」と言う言葉と共に、その陛下が立ち上がった。
「ディオクレイア、付いて来い」
 ドランの後に続きながら、声を掛ける。声を掛けられたディオクレイアが短く返事を返す。そのまま立ち上がり、すれ違うヴォルドヴェラの1mほど後ろに付き従う。その様子をライとミレディアは、身体を動かすことなく見送った。



ライの(裏)設定を掘り下げすぎて難産になる、の巻。 話の大筋とまったく関係ない設定ばかり決まってどうしようもなくなりましたw 設定固まると他のキャラよりもより愛着湧くので必然的に登場回数増える上に一人称も増えるよねー ってことでたぶん今後も敵側の一人称はライが多いんじゃないかな、と勝手に予測。 おかしいな、以前の時は全然そんなこと無かったのに。。。。
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