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太陽の光が届かないこの地では、今が昼なのか夜なのかの区別もつかない。ただずっと、薄ぼんやりとした世界が広がっている。
ライとミレディアが姿を現したところからしばらく進んだ所で四人はもう休もうと足を止めた。身を隠すようなものは何もない。たとえあったとしても敵の本拠地で見つからないことなど不可能に近い。ならどこで寝泊まりしても同じだろう。ならばせめて寝やすい場所にしようと選んだ場所は広い平原だった。極論にもほどがあるがファルトは気にしなかった。
食事を摂ったあとのことだった。次の日のことをポツポツと話していると、レイラが三人の目の前でくるりと宙返りをした。
すると突然レイラの姿が普通の人と変わらない大きさに変わった。キョトンと固まる三人を尻目に、そっと地面に足をつける。
「あの大きさだと、使える魔法が減るんです」
楽なんですけどね、と薄く笑うレイラは続けて両手を胸の前でギュッと握りしめ目を閉じた。ブツブツと小さな声で何か呟くと、段々と握り合わせた掌が光を帯びてくる。
しばらくするとその光は収まり、レイラの手に籠められた力も緩んだ。
「これを」
そう言って再び目を開け、手のひらを広げたその内には七色の光を宿した小さな球が三つ乗っていた。差し出されたそれを一つ手にとって空に翳すように眺める。キラキラと輝きを帯びていて、薄暗い辺りをほんのりと照らしていた。
「これは?」
「精霊玉と言って、精霊の力を結晶にしたものです。何かの時に役に立つと思いますので」
それぞれ不思議そうに手にとって眺める三人に「なくさないでくださいね」と念を押す。神妙に頷くと手に取ったそれをそれぞれ別の場所へしまった。
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