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Land Traveler - 第1章 - 19話

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 声のしたほうを振り向くと、身分の高そうな男が従者と思われる者を連れ、二人のほうを見ていた。歳は二人とあまり変わらないように見えるが、しっかりとした体つきから軍属のようにも思えた。
 風に煽られて彼の一つに縛られた髪と己の頭を覆う外套が揺れる。周りには少しであるが人だかりができ始めていた。
「見慣れん格好だな、旅の者か。…おいそこの二人、顔を見せろ」
 従者に同意を求める言葉の後半だけが二人に向けられた。取れ言われたフードが自己主張するように風に吹かれてはためく。しかし目深に被ったそれは僅かな風ごときでは落ちそうにもない。周りの者たちには、二人の表情はおろか、口許が見え隠れする程度しかうかがうことができない。旅人がフードをおろさないのはよく見られる光景だが、ここまで徹底して顔を隠すの者は珍しかった。
 男の言葉に従い、エリスがフードに手をかける。するとその腕を別の手が掴んで止めた。その手をたどると当たり前のように見慣れた仏頂面が見えた。戸惑いを見せるエリスに無言で首を振る。いくら正体をばらしたくないとは言え、これでは逆に目立ってしまうのではと不安になるが、ファルトはそれでも顔を見せるのを良しとしなかった。
「従わない気か…。斬られても文句は言えんぞ?」
 二人の様子を見ていた男がニ、と不敵な笑みを浮かべ、腰の剣を抜く。後ろに控えた従者の咎める声を片手で制し、そのままファルトに向かって剣を構え切りかかってきた。周りが騒然となる中、顔色一つ変えずに腰にかけていた剣を鞘に納めたまま外し、男の一撃を剣で受け止める。鉄のぶつかる音が辺りに響いた。すぐさま飛び退いてファルトと距離を取った男が不適に笑う。
「受け止めたのは褒めてやるが、そんな細い剣で俺の剣が受け続けられると思ってるのか?」
 嘲るようなその言葉にフンとファルトが鼻を鳴らす。確かにファルトの手にある剣の細さでは、先ほどのような攻撃を数回受けただけで駄目になってしまいそうだった。男の手にある物と自分の持つ剣を見比べその手に握っていた剣と荷物をエリスに向かって投げる。予想していなかった行動に慌てるエリスだったが、綺麗に自分の下へ振ってきたそれを受け止めると、安心したような溜め息を漏らしファルトに顔を向ける。
「持っておけ」
 エリスが剣を受け取ったのを横目で確認したファルトが、男に視線を戻しながらエリスが両手に抱えた剣を指差す。反射的に「はい」と答えたエリスだったが、今自分が持っている剣なしに男の剣をファルトがどう受けるつもりなのかさっぱりわからなかった。
 そんなエリスの心配をよそに、ファルトが周りの誰にも聞こえないほどの小さな声で呟くのが僅かに動く唇でわかった。すぐに握り締めた状態だったファルトの右手の掌から光が零れ始める。それを目ざとく見つけた観衆からおおっっと歓声が上がった。

「現」
 その言葉だけが周りの耳にも届いた。同時に開いた右手から溢れた光が細長く伸び剣の形を成す。やがて光が納まると、ファルトの手には先ほどエリスに渡した剣よりも一回り以上大きい剣が握られていた。

「魔法も使うのか、面白い」
 その始終を黙って見ていた男が、現れた剣を見て「ほぉ」と愉快そうな声を上げる。そしてもう準備は済んだろうと言わんばかりに、肩に乗せていた己の剣を一薙ぎすると、そのまま再びファルトに向かってくる。ファルトも今回は自らそれを受け止めに行った。先ほどよりも激しく刃がぶつかり合い、重い音が辺り一面に響く。弾かれた剣の勢いのまま男が次の攻撃を繰り出す。
 二人の攻防をエリスは勿論、二人を取り囲んだ者達の全てが固唾を呑んで見守っていた。



チャンバラ寸止め!(違) ちなみにファルトが魔法で創り出した剣はよくゲームとかである馬鹿でかい大剣ではありません(笑) 彼は言うなれば確実にスピードタイプなのであんな剣持ったら戦闘能力がた落ちです。
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