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Land Traveler - 第3章 - 1話

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 ウィルディスを発った3人は飛竜や天馬に跨りそのまま上空から東へと向かっていた。早朝の遣り取りの後エリスは疲れた様子のファルトに、同伴させて良かったのかと訊ねたが、「奴は言っても聞かん」と諦めた様子で溜め息を吐かれた。「それに奴は…」と何か言いかけ、思い直したようにハッとすると口を噤んでしまった。
 一方当のレオマイルは鼻歌でも歌いそうなほど上機嫌に二人の前を進んでいる。本来付き添いに近い立場にも関わらず、手綱を切る方向がファルトの思う方向と殆どずれていないのは幸か不幸か。よもや行き先が少しでもずれたら何も言わずに離れてしまおうとファルトが考えていたなど、まして方角をずらさないレオマイルに殴りたいとばかりに剣呑な雰囲気をにじませているなど露にも思わないレオマイルにはわからないことだった。





「ファルト様、あの煙は何でしょうか?」
 ある時、上空を飛び続けていた3人の視界の下部に黒い煙が掠めたのは、ウィルディスから離れ、山を3つほど越えて広い森を過ぎた頃だった。始めに気付いたエリスがファルトに飛竜を近付け声をかける。それまで何か考え事をしていたらしいファルトは、その言葉に顔を上げ、エリスの指し示す先を見た。
 見下ろした先には立ち昇る黒煙と、所々から炎を上げる街。しかし、ただの火事と片付けるにはおかしな火の上がり方をしてた。その様子を探るべくファルトは飛竜の高度を下げていく。
 しばらくもしないうちに下の様子がはっきりと見えた。火は小さな街の家屋や畑から上がっていた。そして人々は燃え盛る炎に目をやる事もなく一心に何かから逃げ惑っている。
「っ!あれは!!」
 ここ最近で否応なく見慣れることになったその街の人を追う姿に、エリスの表情が険しくなる。街の人を後ろから追うそれらは、やたらと身体が太っていて薄汚い緑色をしたトロルであったり翼が生えた化け物の類だった。思わず左手で腰に据えた剣の鞘を掴む。
 右手でしっかりと手綱を握りなおし、すぐにでも下へと方向を変えられるように体制を整えた、が。
「…?助けに行かないのですか?」
 見下ろすばかりで一向に下へ手綱を切る様子を見せないファルトに堪りかねてエリスが口を開いた。そんなエリスにファルトはどこか呆れたような視線を向ける。
「なぜ助けねばならん?」
 目を丸くするエリスにファルトはむしろ彼女の意見を意外、とでも言いたそうな表情を向けた。すぐにエリスは噛み付きそうな勢いで言い寄る。
「目の前で被害に遭っている方々を見捨てるのですか!!?」
 珍しく声を荒げたエリスに少し目を見開くも、ファルトにそれ以上の変化は見られない。わずかに見開いた瞳もすぐに常と変わらくなった。
「別に俺は善意や正義感で旅をしてるわけでもない。自分が襲われたでもなし、わざわざ被害を被りに行くことでもないだろう」
「ですがっ…!」
 もっともなファルトのセリフに言葉を詰まらせる。実際今までとて魔物に襲われて応戦したことはあったがファルトが率先して動くことはなかった。偶然だと思っていたがこの様子だとエリスが気付かなかっただけで近くで被害に遭っていた人がいたのかもしれない。
 すぐにでも地上に降りて街の人たちを助けたいが、ファルトの「従者」である以上勝手に動くこともできない。どうすることもできない歯がゆさに手綱を握る手に力がこもった。
 レオマイルはそんな二人の様子を見ながら首をかきつつ溜め息を吐いた。
(仕方ねぇなぁ…)
 そう心の中でごちると、二人を尻目に天馬を下へと向かわせる。
「どうした?」
 レオマイルの様子に気付いたファルトがちらり、とレオマイルに視線をやった。
「ちょっと下の街のお姉さんに呼ばれたみたいなんでね」
 そう言って軽く片目を瞑って見せるとそのまま上機嫌にトロルたち襲われている街に向かって下降していく。そんなレオマイルの様子を一方は唖然とした様子で、もう一方は半ば呆れら表情で見送っていた。




 一方トロルたちに襲われていた人々は、突如空中から颯爽と現れ、あっという間に数体をなぎ倒したレオマイルに唖然とするも、更に次々と魔物を倒していく彼にいつしか歓声を上げていた。もちろん魔物たちもただやられるばかりではなく、街の人へと向けていた足を彼に向ける。そのまま彼に襲い掛かる者もいれば、彼がやってきた上空に視線を向ける者もいた。そしてその魔物たちは、レオマイルが降りてきた遥か上空にいたファルトたちを見つけた。

 急に聞こえた大きな唸り声に同じ魔物はおろか、逃げていた人たちまでその声の主へ顔を向けた。街の人たちのほうはファルトたちを認識しきれていないのか、なんだなんだと声を上げている。一方魔物たちは気配だけでも二人を敵だと判断したらしい。魔物の中で飛ぶことのできる者たちが咆哮しながらファルトたちに向かってくる。襲い掛かってくる魔物に備えてエリスが剣を抜いた一方で、ファルトが不機嫌をあらわにした様子で舌打ちをした。しかし、そのまま高見の見物と言うわけにもいかずエリス同様に剣を構えると、向かってくる魔物に備えて手綱をしっかりと握り直した。
 その時、どこかから視線を感じて辺りを見渡す。自分たちのほかに上空から町の惨状を眺めているものなど見当たらなかった。気のせいかと思い、改めて眼前に迫りくる魔物を見据える。
 感じた視線に嫌な予感じみたものを感じながらもファルトは、襲いくる魔物に応戦する為に剣を抜いた。



ファルトは押しに弱いです(笑) と言うか、基本面倒臭がりなので押し問答をするのも面倒→勝手にしたら?的な流れです。 押し切られるのも押し問答も嫌な場合は気付かれないように行動します。 ある一文を消そうか迷ったんですがそのままにしてあります。 とある伏線なんだけど本編には一切出てこないので未だにどうするか悩んでる。
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