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Land Traveler - 第2章 - 12話

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  仄暗い場所にいた。カサカサと枯葉を転がす音は聞こえるが肌を直接刺す冷たさはない。けれど、ゆっくりと冷えが体を蝕んでくるのがわかった。
 先ほどまでいたはずの、風を覆い、冷えを阻んでいた存在が消えていた。あたりの気配を探るが近くに人はいそうになかった。
 捨てられたか、と思うがさほど絶望は感じない。むしろあのまま殺されるよりよっぽどマシだった。とはいえ、どうしたものか。赤子の身体では自力でここから動くこともままならない。魔力を使うにもこの身体で耐えられるかどうか。

 どうするかと考えていると急に、射し込んでいた光が遮られた。先ほどの人物が戻ってきたのかとぽっかりと開いた穴の先を見つめる。逆光であったがそれが人の足だと言うことはわかった。しかしそれが誰なのか、先ほどの人物なのかもわからない。ガサリ、膝を折る。伸びてきた腕が先ほどよりも細い、衣服も異なる。別人物だ、と理解すると同時にその腕が己の小さな左手を取った。

「ようやく見つけました、我が君」
 抱きかかえてそう告げた顔は見知らぬ人物だった。





「失礼いたします」
 開かれたままの扉のほうから声が聞こえ、思考の淵から意識が浮上する。顔を上げると、先程の記憶の中と変わらぬ顔が近づいてきていた。
「お休みでしたか」
 椅子に座っている様子から何か察したのか、申し訳ありません、と続ける言葉を否定する。
「少し、昔を思い出していただけだ」
「昔、ですか…」
「まぁ昔と言うほどでもないがな。お前に拾われた頃のことだ。……して、準備は整ったといったところか」
「はい。ご報告の為にお伺いしました」
 感傷に耽ることもなく普段通り、無感情に面会の理由を問えばそれを不信がることもなくディオクレイアも淡々と報告を済ませる。
「今回はあくまで邪魔者の正体を探るのが目的だ。雑魚であればそのまま排除しても構わないが、梃子摺りそうなら手を出さないことだな」
 要点を抑え、手短に済まされた報告に一つ頷き、そう付け加える。穏やかに見えるそれが一つ行動を間違えると冷徹な仕打ちとなって返ってくることを熟知しているディオクレイアはそれをしっかりと頭に刻む。この主はたとえそれが傍に置いているあの老人であっても容赦はしないだろう。

「…あぁそれと」
 それ以上の会話もなく、一礼をして部屋を退室しようとした時に掛かった声に振り返る。すこぶる機嫌がいいのか、珍しくもその口許が僅かに笑みを象っていた。
「ライのことも使ってやれ」
「…は」
 すっかり忘れていた今回の同伴者の存在を指摘され、ハッとする。それを顔に出したつもりはなかったがすっかりお見通しのようで、初めて聞いたかもしれないクスクスという笑い声が彼から漏れていた。



2つ前の場面と一応繋がってます。 ついでにディオクレイアは年齢不詳なお姉さんです。 …でもイメージ的には中性的な感じなんだよなぁ。。。 あ、あと彼女はヴォルドヴェラに忠誠を誓ってるだけなんで他の仲間とか眼中にないです。 「仲間?なのそれ美味しいの?」状態。 だからライへの態度が特別悪いって事じゃないからねっ!!
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