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「ね~え、ライ?なぁんでヴォル様は急に『こっち』に来たのかしら?」
夜もすっかりと更けた頃、ファルトたちが日中に寄った、砂と化した街跡にライとミレディアの姿があった。しゃがみこんだミレディアは頬杖を付きながら砂を手に取る。手の平を傾けるとサラサラと滑り落ちるそれには、当たり前のように水分など含まれていなかった。
「さぁな」
ヴォルドヴェラが大陸に足を踏み入れ、この街を消し去ったのは、二人にとっても予想外のことだった。突如として姿を現した彼は近くの値踏みするようにざっと街を見回すと説明もなくこの街を消した。街の者達は逃げる事はおろか、何が起きたのか知りうる間もなく彼の魔法に呑み込まれた。全てが消え去った街を見て満足そうに口許を歪めたヴォルドヴェラは、二人に短く用件を告げると再び消えてしまったのだった。時間にして一刻もあっただろうか。任されたはずのファルト達に関する報告も聞かずに去っていった彼に疑問も残ったが、だからと言って何ができるわけでもない。
「理由があったにせよ、俺たちには関係ないだろう。‥‥それよりもそろそろ戻るぞ」
「それも不思議なのよねぇ‥‥。わぁざわざ招き入れる必要なぁんて、これっぽっちもないじゃなぁい?」
それも疑問に感じたことだった。去り際にヴォルドヴェラに言われたことは「島に戻り、ファルトたちを招きいれる」事。海の上で戦い、いっそ藻屑にしてしまおうとしていたライの考えは叶わぬこととなる。それを残念に思わないわけでもなかったがそこは割り切る。陛下の下す命令が第一。自分の考えなど、足元に及ぶはずもなかった。
「行くぞ」
まだ腑に落ちない様子のミレディアに声をかける。置いていきそうな雰囲気の彼に、ミレディアは慌ててその後を追った。
またうっかりするところだったよ!!
ミレディアの口調はこれでもかと言うくらいにしてます(笑)
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