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Land Traveler - 第2章 - 11話

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  レオマイルが二人を城に連れてきた翌日の早朝、まだ朝靄も晴れきらない時刻に王宮の庭に二つの影が現れた。会話もなく、ただ門へと進める足音だけが辺りに響く。その音が、進む先に見える門に寄りかかるように佇む人影を見つけて止まった。
「レオマイル……」
 眇めた目で見たその姿に、影の一つがそう呟く。その声に気付いたのか、門に寄りかかっていた影が動いた。
「どうせこんなことだろうと思ってな」
 お前の考えることなんてお見通しだ、とばかりに口元を歪めて得意げな顔を向ける。その視線の先、ファルトは心底呆れたような表情で、頭痛に耐えるように片手で頭を抱える。そして、嫌そうに視線を向けたレオマイルの後方に見えた馬に似たシルエットにこめかみに手を当てた状態のまま固まった。

「おい、まさかとは思うが……」
 頭を過ぎった予感にファルトが顔を歪める。
「ああ、俺もついていこうと思ってな」
「断る」
 嬉しいだろう、と得意げに言った言葉を遮るように言葉を被せる。にべもないファルトの様子に肩を竦めるレオだが、その表情にあきらめた様子は見られない。

「旅の仲間は多いほうが面白いじゃないか」
「遊びではない」
「なら尚更、楽しまないと」
「…その天馬に乗りたいだけだろう」
「酷い言いようだな、俺が遊び人みたいじゃないか」
「事実だろう」
「これでも一応皇子なんだけどねぇ」
「ならば責務があるだろう」
「上3人以外の仕事なんて高が知れてるさ、お前も知ってるだろ?」
「…両親は」
「母上にはこっち来るときに言ってきた。陛下には昨日のうちに言伝が回ってるはずさ」
 あまりにも用意周到なレオマイルに溜息がこぼれた。しかもウィルディスの国王にファルトについていくと伝えたということはファルトの居場所を伝えたようなものだ。このままではヘラザードからよくて急使、最悪国王自ら足を運んでくるのも時間の問題だ。
 どうだ、と言わんばかりの彼の表情を無性に殴りたくなった。その衝動に任せて鼻っ柱をへし折ってやって伸びてるうちに立ち去ってやろうかなどと不穏なことを考える。しかしそうすれば復活したレオマイルがやってきたヘラザードの者に何を言うかわからない。

「……勝手にしろ」
 至極不本意そうに言うと、事が思うように運んだことに満足したのか、レオマイルが少し意地の悪そうな笑みでファルトを見た。その顔をファルトは一度とて見ようとはしない。レオマイルのほうもそれを気に留めた様子もなく、今度はエリスに顔を向ける。
「では改めて。よろしく、お嬢さん」
 そう言って片目を瞑り恭しく礼をしてみせるレオマイルの傍らでファルトが盛大に溜め息を漏らす。対極な二人の様子にどうしたものかと戸惑うが、二人を無視するようにファルトが城外へと歩みを進めたため何を問うこともできず後に従った。



天馬は馬に似た姿をした動物です。人を乗せて空を飛ぶことができます。 で、個体数が少ないためウィルディスでは繁殖など生態系の研究が進められています。 ついでにウィルディス補足。 大国で財政に余裕があるためこの国では様々な研究が行われています。 新しい魔法であったり素材であったり生物であったり医療であったり多種多様。 天馬もその中の一つです。
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