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Land Traveler - 第5章 - 1話

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 四人が城内に足を踏み入れると、それまでの攻撃はピタリと止まった。
「何だったんだ…?」
 入り込んだ途端音を立てて閉まった扉を、半ば呆然と眺めていたが再び開くことも、周りから敵が現れることもなかった。仕方なしに四人は長い回廊に足を進める。誘い込まれたとしか思えない状況の割に逃げ遅れたような雑魚にしか遭遇せず肩透かしを食らった心地でいた。
「態と、だろう。おそらくヴォルドヴェラの他にもこの城の中で強力なモノが待ち構えている」
 首を傾げるレオマイルの呟きにファルトが静かに答える。その声は高い天井を反射し、実際よりも大きく響いた。

 その時、四人の後方が俄かに騒がしくなった。
「何だ?」
 突如として聞こえてきたそれに、足を止めて振り返る。既に入り口から離れているどころか、何度か角を曲がった上に階段も登っている。音の正体はわからない。しかし、確実に何かが近づいてきており、地響きというに近い音に変わってきた。四人に緊張が走る。轟音、レイラを囲むように身構えた三人の武器が小さく音を鳴らす。暗がりの向こうから砂煙のようなものが見え始め、それが大量のモンスターによるものだとわかるのに時間はかからなかった。ガランとしていた回廊が一気に熱を帯びる。追い打ちをかけるように四人が進んでいた先からも雄叫びが上がった。あっという間にモンスターたちは四人を挟み込む。
「…今、光となりて闇を照らし、潜む悪に終焉を!」
 声高に叫んだレイラが交差させていた両手を勢いよく振り下ろす。その瞬間、辺り一面に閃光が走りモンスターたちを襲った。多くのモンスターが倒れ、その数は先程の半分にも満たなくなる。続いてレイラ以外の三人が敵に向かってそれぞれ走り出す。すぐにレイラも体制を整えると、三人同様に敵へと向かっていった。





 大半がレイラの冒頭の魔法によって倒れたこともあり、襲ってきた数の割に随分と早くカタが付きそうだった。けれど、外にはいなかったゾンビやスケルトンなどが厄介で、手を煩わせることになった。こういった命ないものには魔法での攻撃がが最も効果的だ。しかしこの後の事を考えるとできる限り魔法力は温存させておきたかった。

 それにいち早く気付いたのはエリスだった。最後の一体を仕留めたファルトが軽く息を吐いて手にした剣を鞘に収める。そんな彼を見ていた視界に不穏な影が写る。
「危ない!!」
 咄嗟に叫んで彼を庇うように駆け寄った。エリスの声に当たりを見渡したファルトが敵に気付き、思いの外近いその距離に瞠目する。同時にレオマイルが手にしたままの剣で襲いかかってきたモンスターにとどめを刺した。一瞬の出来事に暫く無言の時が流れる。

「…すまなかった」
 静かに口を開き、庇うように置かれたエリスの手を少々強引に外す。目に見える敵がいなくなったことに気が緩んでいた。気配を探ることを怠った自分に内心毒吐いて顔を歪ませる。ファルトの口から出た謝罪の言葉に、一瞬目を見張るも、すぐに微笑んでエリスは彼から離れた。周りにもう敵の気配はない。
「ご無事で何よりです」
「そーそ。お前死んだらここ来た意味なくなるしな」
 ニッコリと笑って答えるエリスに被せるようにレオマイルが口を挟む。モンスターの血を払ったままの剣を肩に担いだ彼の揶揄するその言葉にファルとは冷たい眼差しを向けるだけだった。不機嫌そうに先に行こうとするファルトに、レオマイルは不平を言いつつも従う。

「まったく、敵陣の真っ只中って自覚、あるんですかね?レオマイル様は」
 盛大に溜め息を吐き呆れ果てたレイラが同意を求めるようにエリスを見た。しかしエリスはそれには答えず、ただ苦笑いを浮かべて肩を竦める。
 その時、少し離れた先からレオマイルが二人を呼ぶ。それに促される形で、二人は歩き出したのだった。



5章に入りました! レオマイルは基本どこにいてもおちゃらけてます。 むしろちょっとまじめに語っちゃったりしたら後でへこむんじゃないですかね?
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