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ファルト達がルティアと食事をしている頃、森の外には二つの影が浮かんでいた。文字通り宙に浮かぶ彼らは、ファルトたちが消えた森の入り口をじっと見下ろしている。
「ちょっとぉ、せぇっかく来たのに入れないじゃなぁい」
少し間延びした口調で一方の影が不服そうな声を漏らした。プラプラと振られた右手は小さな光を伴っていた。もう一方の影が少し呆れたように口を開いた。
「まぁ、精霊のいる森だしな」
「せぇっかく急いで出てきたのにぃ…」
「どうせずっと籠っているわけでもないだろう」
「でもぉ…」
軽く口を尖らせた相手を慰めるように言う。拗ねた様子の影が手持ち無沙汰気味に長い髪を手に巻きつける。
「出てくるまでに周りの村でも街でも少し『弄って』おけばいいだろう。これまでの様子ならその内出会すさ」
ほら行くぞと先を促す声に「そうだけどぉ…」と諦めきれない声が続く。しかし、未練がましそうに森を振り返りつつも去ろうとする相手に従った。
「ね、ライ。どんな奴?ヴォル様の『弟』って」
森から離れつつも、髪の長い影が興味深々といったようにもう一方ーーーライを覗き込んだ。
「…あまりヴォルドヴェラ様には似ていなかったな。何を考えているか知らんが、 過度に期待などするなよ、ミレディア」
ジロリ、とミレディアを睨めつけると、彼女はペロリ、と舌を出して肩を竦める。その顔にあまり反省の色は見られない。
「大丈夫よぉ~。生きてるのに興味なんて持つわけないじゃない」
フフフ、とさも楽しそうに口元を揺らすと、ライ共々、闇の溶けて消えていった。
うっかり入れ忘れるところだったシーン。
ミレディアちゃんはうざったいくらいに間延びした話し方をします。
敵側の性格的な意味での紅一点。
‥‥だってディオクレイアさんはもう男前な性格だから‥‥‥
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