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「ヴォルドヴェラ、正確にはヴォルドヴェラ=L=ヴィザード。デコルヴィザード帝国の今の皇帝の名だよ」
いつの間にか日が傾き、赤々とした日の光が部屋に射し込んできていた。部屋を過ぎる風に肌寒さを感じ、レオは開け放たれたままだった窓を閉めた。窓の外を見つめる表情は穏やかなものだったが、その瞳の奥はどこか暗い影を落としていた。
「今までずっと不在だった…?」
つい先日ファルトに聞いたことだった。話の流れからレオが発した単語がウィズデリアに関係のあるものだとは思ってはいたが、ずっと現れなかった皇帝の名だとは思わなかったらしい。その目が、驚きで見開かれる。その様子をレオは窓辺にたったまま見つめ、静かに頷く。
「……一族で継がなくとも、やはり王はルノア族なのですね」
ファルトから話を聞いた時は種族に関係なく相応しい者を待っているのかと思ったがそうでもないのだろうか。エリスの呟きにレオが「ああ」と短く応える。
「まぁ、今までのあの国の皇帝にどのくらいルノア族の者がいたのかはわからないけどね」
そもそもこれまでに何人の皇帝がいたのかもわからないし、と呆れたように苦笑する。窓際から離れたレオは、そのままエリスの向かいのソファに腰を下ろした。
「歴代はともかく、少なくともヴォルドヴェラはルノア族なんだ、しかも、本来なら別の国の王になるはずの」
ルノア族に生まれたからといって全ての者が王位に就けるわけではない。国の重鎮で修まってる者もいれば野に下っている者もいる。現にレオマイルとて、王族だとは言え王位に就ける可能性など万に一つもないに等しい。
「でも」
そこで彼は言葉を区切る。その視線は机に向けられたままで、しかしそのどこにも焦点は定まっていないようだった。
「彼はある条件に当てはまってしまったため、王になることも、更にその国に留まるどころか、生きることさえ許されなかったんだ」
淡々と話すレオマイルはどこか無表情で、漂う雰囲気には悲しげな色が混じっているが、その一方で酷く冷徹な、ひやりとするものを感じる。知らずエリスは居住まいを正した。それに気付いたレオがクスリ、と微笑む。
「……少し、昔語りをしようか。…ルノア族のフォリアトゥーレ(起源逸話)は聞いたことある?」
…今から考えるとこの話をレオにさせるんじゃなかったな、とは思うけどもう遅い ←
そもそも彼以外話してくれる人いないんだけどね、ファルトン説明してくれないし。
フォリアトゥーレ。(Vor Lir Toole)
種族が確立した辺りのそんなんです。
日本で言えば日本書紀…みたいなものかなぁ…?
あの、藤原氏が天児屋根命の子孫である~的なこと書いてある奴(日本神話だっけ??)
ただいろんな種族がそれぞれに持ってるから、もっと民話に近い感じです。
突然ですけど次から昔話入りまーす
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