1. ホーム
  2. MAINページ
  3. Land Traveler
  4. 第5章
  5. 6話

Land Traveler - 第5章 - 6話

章先頭へ 前の話へ 次の章へ
縦書き
 ファルトたちの足音が遠退き完全に聞こえなくなると、レオマイルは深く息を吐き、ようやく近付いてくる二人に向き合った。煙はとうに晴れてはっきりと相手の姿を見せる。
「あらぁ?私たちの相手は貴方なのぉ?」
 一人残ったレオマイルの姿を確認したミレディアがさも楽しそうに声を弾ませる。その声音にも表情にも小馬鹿にした色が含まれてるのは、気のせいではないだろう。そんな彼女にレオマイルも皮肉そうに顔を歪める。
「俺じゃ、役不足かい?」
「そんなワケじゃないけどぉ…。ちゃんと、楽しませて、ね?」
 その言葉の直後、ミレディアの隣にいたライから魔法が放たれ、レオマイルに炎が襲う。咄嗟の事にも動じることなくそれを避ける。その行動すら予想されていたのか、避けた場所目掛けてミレディアの剣が振り下ろされる。慌てたレオマイルはその剣を己の剣の柄近くで何とか受け止めた。女性の剣である筈なのに手がジンジンと痺れるほどの衝撃が伝わってくる。普段の口調や態度からは想像できないその威力に舌を巻いた。流石は四天王を名乗るだけはあるか。
 体重をかけて剣を弾き、レオマイルは体制を整えるために後ろに飛び退くいた。先の接触でわかっていたが、これは本当に腹を据えてかからねばいけないようだった。

 しかし一息吐く隙すら与えずにミレディアが再びレオマイルに襲いかかる。その傍ではライが何かの呪文を唱えてるようだった。それに気づいて珍しくも舌打ちをしてしまう。これでは二人に気を巡らせなければならず、非常にやりづらい。
(どっちかだけでもさっさとどうにかしねぇとなぁ…)
 ライから放たれた魔法を避け、更にミレディアの剣も流しつつと、舌打ちをした割に思考は冷静だった。二対一などもとより不利な戦い。頭を使わなければ勝算などあるわけもない。だからこそ全ての局面において慎重さが必要とされた。
 攻撃を避けながら二人の様子を観察する。先程の攻撃といい、ライが魔法系、ミレディアが肉弾戦だろうか。ミレディアが今まで魔法を仕掛けてこなかったからといって決めつけるのは早急すぎるか。現にここに来てすぐに「お土産」と言って大量のモンスターを召喚したのは彼女ではなかったか。



(…やめた)
 あれこれと考え込むのはどうも性に合わない。腹の探り合いなどそれこそファルトの専門分野だ。自分はただ、目の前に立ち塞がる物を払い除けるだけでいい。その方が、シンプルだ。
 一度しっかりとミレディアに向き合う。見据えてきた瞳に今まで以上に力がこもったのに気付いたのか、ミレディアの動きが僅かに止まる。そして口角を上げて不敵に笑むと再びレオマイルに向かってきた。レオマイルの方もそれをただ立って待ち構えるなどはせず自分から彼女に向かって駆け出す。勿論、ライのことも忘れてなどいない。彼から繰り出される魔法を器用にも避けながらも速度は緩めない。敵二人も手を緩めるなど毛頭考えておらず、ミレディアが攻撃をしかけると絶好のタイミングでライの手によって魔法が放たれる。その付き合いの長さが容易に想像できるほどの抜群のコンビネーションだ。それでも負けるわけにはいかない。頃合いを見計らうと防戦一方だった姿勢を変えた。ミレディアから間合いを取ると剣を片手で構える。そのままライの魔法を無視して彼女に向って走り出した。運良くかそれすらも計算の内なのか、放たれた魔法はレオマイルの肩を掠めはするものの彼の動きを止めるほどには至らなかった。避けられたライはイライラと舌打ちをして立ってる位置をレオマイルの真後ろへと移動する。ここからならば避けられるなどということは起こらない。
「馬鹿め、終わりだ」
 勝ち誇ったよような笑みを浮かべて炎の塊を放つ。炎はそのまま一直線にレオマイルに向かって突き進む。当のレオマイルは背後に迫るものに気付いていないのか、左右に逸れることなくミレディアへと向かう。すぐにでもお互いの剣がぶつかり合いそうなほどであった。レオマイルを迎え撃つミレディアの視界の端に赤々と燃え上がる炎が映る。その奥にいるライと視線が合い、同じように勝ちを悟って口角を上げた。
 ミレディアが形だけでも剣を交えようと構えた時だった。向かってきていた筈のレオマイルが一瞬にして彼女の視界から消えた。驚いて辺りを見回すが上にも下にも見当たらない。後ろかと振り返ろうとした時にライの鋭い声が響き、ハッと放たれた魔法のことを思い出す。慌てて視線を目の前に戻す。あるいはすぐに避けるなり防御するなりすれば間に合ったかもしれない。しかし迫り来る炎に目を見開いた彼女は反応が僅かに遅れた。呪文を唱え始めて幾分もしないうちに肌に熱を感じられるほどに炎が近付いてきた。
 



ちょっと長いので区切ります。
章先頭へ 前の話へ 次の章へ
▲ページ先頭へ▲